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ゴルトベルク変奏曲の演奏時間、繰り返しなど

時々、ゴルトベルク変奏曲ばかり集中して聞くことがあります。昨年の秋頃にもかなり集中していくつも聞いたのですが、 その時に、それぞれの録音の演奏時間と繰り返しをチェックしてみました。

▼バッハの曲集の中で、オルガン小曲集とゴルトベルク変奏曲は特にCD録音と微妙な関係にあります。つまり、テンポとリピートによって CD1枚に全曲を収録できるかどうかが微妙なのです。従って、これらのCDのテンポとリピートが、演奏家の解釈を示しているのか、レコード会社側の 都合を示しているのか、どちらとも言えない場合があるかも知れません。

このチェック内容を表にまとめてみました。(→ゴルトベルク変奏曲演奏比較表)。 エクセルの表をそのままhtmlに書き出したので、少し重い表になっていて申し訳ありません。 この表の説明です。

 1."var2*"のように"*"が付いている変奏曲は、リピートの一部の音符が違うものです。つまり、リピートをしなければ一度も弾かれない音符が存在することになります。
 2.血液型のような記号は、"O"はリピートなし。"A"は前半のみ、"B"は後半のみ繰り返し。"AB"はフルリピートです。
   "Oa"はランドフスカのみに該当しますが、リピートなしで全体を弾いてから、Aの8小節のみ弾いて終止しています。
 3.実際の演奏時間の下にある数字は、フルリピート(ノーリピート)と仮定した場合の演奏時間を機械的に計算したものです。

私だけかも知れませんが、リピートの有無は、よく注意して聞かないとすぐに忘れてしまいます。そこで、まだそういうチェックをしながら聞いていない録音は「血液型」が空白になっているわけです。

さて、実際の演奏時間だけを比較すると、最短がグールドの1959年録音(ザルツブルクライブ)で、わずか37分。最長はトゥレックの1時間35分という差があります。 ところが、リピートの条件を同じに仮定した場合、最速はスコット・ロスの1985年録音(ライブ)、最遅はレオンハルトの1953年録音となります。各変奏では、さすがにグールドの1955年録音中12曲が最速。逆にレオンハルトの1953年録音中8曲が最遅でした。 ところが、第25変奏ではなんとグールドの1955年録音が最遅という面白い結果となりました。(この演奏は、出だしのテンポはそれほど極端に遅くないのですが、途中からどんどん時間が停滞していく奇妙な演奏です。)

▼さて、これだけの録音を聞いたのなら、どの演奏が良かったのか述べよ、と言うことになるでしょう。正直言いまして、これはだめというような演奏はほとんどありません。(とりあえず、ワーストの演奏としてはシフをノミネートしておきます。)

とりわけ、レオンハルト以後のチェンバロの演奏には「はずれ」はありませんでした。 その中で、マギー・コールの演奏はオーソドックスなアプローチで、作品への共感にあふれた演奏でした。ロバート・ヒルのライブ録音はミスタッチ連続のひやひやする演奏ですが、燃え上がるような勢いのある、すさまじい演奏でした。

ピアノによる演奏は、一般的にはグールドの新旧録音、最近ならペライアかヒューイットなどがよく取り上げられます。しかし、グールドはともかくとして、最近のものではエフゲニ・コロリオフの演奏が群を抜いてすばらしいと思います。 装飾音の扱いの即興性と的確さ、ピアノの音色の豊かさ、また、躍動感あふれたリズム、音楽の姿の見事さ、音楽から伝わる光と暖かさ、いろいろな表現が可能ですが、またどのように表現してもその音楽の豊かさを表現しつくすことはできません。 「グールドの呪縛」という言葉がありますが、私を完全にそれから解放してくれた演奏です。 中国出身の女性ピアニスト、チゥ・シャオメイの演奏も大変深い音色をもった感動的なものでした。

▼最後に、ゴルトベルク変奏曲を語る上で欠かせないWEBサイトと言えば、何と言っても"a+30+aGoldberg Variations"のサイトです。 このサイトからは、チゥ・シャオメイの存在を教えていただいたことを初めとして、 多くの貴重な情報をいただいたことを付記しておきます。

(2003年1月12日)


ヴィヴァルディの声楽作品

昨年暮れに、例のブリリアントの40枚ボックスを買ってしまいました。 以前から横目で見ていたのですが、HMVで\9,990(ダブルポイント付き)というのにつられて、ついつい配偶者の苦言を忘れてしまいました。 その手前というか、暮れからヴィヴァルディばかり聞いております

▼ヴィヴァルディと言えば、「一つのコンチェルトを600通りに作曲した」などと言われたりして、 結局「四季」だけ聞けば良いのかなどと思いがちですが、これを言った人(ダルラピッコラの言葉だそうですが)は 実際に600近い器楽曲を全部聞いたのかと尋ねたくなります。このボックスには160曲余りの器楽曲と40曲余りの声楽曲が 収められていますが、その一部を聞いただけでも、今までヴィヴァルディのごく表面しか聞いていなかったことを感じさせられます。

特に、声楽作品など聞いていると、ただならぬものを感じることもあり、これは腰を据えて聞かなければと思います。 今まで、バッハがヴィヴァルディにはらっていた敬意はいささか過分のものではなかったか、などと感じることもあったのですが、 少し認識を改めなければならないようです。

別にこの曲集を買わなくても、けっこう有名な曲だと思いますが、"Stabat Mater" RV 621 はすばらしい作品です。 バッハのように、声楽と器楽が複雑に絡み合うということはなく、簡素な伴奏で思いのままに歌わせるという趣向ですが、 とにかくひたすらに美しく、ひたすらに悲しい音楽です。
(この演奏は、バッハの教会カンタータ全集を録音したレーシンクの指揮で、 ソリストたちも同じメンバーです。カンタータの録音だけでも大変だったと思うのに、ついでにヴィヴァルディまでCD5枚分録音していたとは! 恐れ入ります。アルト=カウンターテナーのブワルダもバッハの時よりのびのび歌っていて、ほれぼれします。)

また器楽曲でも、チェロソナタなど、バッハのガンバソナタ(BWV 1027-1029)と比べても遜色ないと感じられ、何度も聞いてしまいます。 (以前にトルトゥリエとヴェイロン=ラクロワの録音を聞いたときは退屈なだけでした。)

▼さて、バッハファンとして気になるのは、カンタータ12番「泣き、歎き、憂い、怯え」"Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen"の 原曲がヴィヴァルディにあるという話です。

日頃不勉強なもので、この機会に"Oxford Composer Companions J.S.Bach"を読んでみますと、 確かに従来、ヴィヴァルディの"Piango, gemo, sospiro e peno"(「泣き、うめき、嘆き、苦しむ」) RV 675 が原曲と言われていたと言うことが書いてあります。

これを聞いてみますと、メロディと言い、半音階下降の伴奏と言い、偶然の一致とは言いがたいもので、バッハがこの曲からテーマを取っているのは間違いなさそうです。 BWV12は、後にミサ曲ロ短調のCrucifixusに転用され、クレドの中核をなしています。
その一つ前のEt incarnatus estはペルゴレーシからテーマを取ったことが知られていますが、 イタリア起源の曲が並んでいることになるのですね。

▼リストマニアの私としては、この40枚の全貌をリストにせずはおれません。と言うことで取りかかってみましたが、 実際にはCDの表記に誤りもあり、番号の書いていないものもあり、なかなか簡単ではありませんでした。

次のCDには番号の表記がなく、作品の特定に困りましたが、いろいろの方の助けもあり何とか特定できました。この間の経過については、ヴィヴァルディのサイト赤毛の司祭の掲示板をご覧ください。

Vol.18
RV 93 	室内協奏曲 ニ長調
RV 85 	トリオ・ソナタ ト短調
RV 82 	トリオ・ソナタ ハ長調
RV 540 	ヴィオラ・ダモーレとリュートのための協奏曲 ニ短調
RV 485 	ファゴット協奏曲 ヘ長調(RV457異稿)

Vol.22
RV 151 	弦楽のための協奏曲 ト長調「田舎風」
RV 417 	チェロ協奏曲 ト短調
RV 428 	フルート協奏曲 ニ長調「ごしきひわ」(RV90参照)
RV 533 	2つのフルートのための協奏曲 ハ長調
RV 155 	ヴァイオリン協奏曲 ト短調
RV 92 	室内協奏曲 ニ長調
RV 84 	トリオ・ソナタ ニ長調

また、一部の作品番号には明らかな誤りがありました。

  	  正   	  誤
Vol.1 	RV 293  	RV 257
     	RV 242  	RV 258
Vol.9 	RV 554a 	RV 544a
Vol.24 	RV 532  	RV 460
      	RV 425  	RV 554

以上の結果はヴィヴァルディ作品表(Brilliant Classics)としてまとめましたので、ご参照ください。

(2003年1月6日)

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2003-01-12更新
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