タイトル | : 名曲中の名曲、BWV36 |
投稿日 | : 2006/12/06(Wed) 18:17 |
投稿者 | : 旅の者 |
> 36番は遡ればケーテン時代の世俗カンタータ36cになるのですが、その後36bを経由してこのBWV36で、レチタティーヴォのかわりにコラール編曲が採用されました。
この曲はバッハのお気に入りで、わかっているだけで、世俗カンタータに2回も転用されています。
その1回目が、ケーテン侯妃誕生日用なので、(1726年、36a)そのせいか、解説等には、たまに「原曲はケーテン時代の世俗カンタータ」とされているものがあります。
わたしも、あまり音楽が生き生きとしているので、はじめはケーテンのものとばかり思っていました。
しかし、実際には、原曲(36c)は、ライプティヒ時代のバッハ全盛期、1725年の世俗カンタータのようです。
(まあ、それ以前にケーテンの原曲が存在する可能性はありますが)
Skunjpさんの記事にもあるコラール編曲は、かなり後になってからの突然の大改作時(1731年)に付け加えられたもので、全部でなんと3曲。
すべて、例によって、ルターのコラール、「いざきませ、異邦人の救い主よ」に基づくものです。
メロディーは、もちろん同名の有名な賛美歌。
つまり、生き生きとした世俗カンタータの合唱、舞曲アリアの間に、
後期の深い作曲技法の投影されたコラール編曲がちりばめられているわけです。
Skunjpさんがおっしゃるように、そのどちらも言葉にならないくらい美しく、しかもそれらが決して無理なく渾然一体となっている。
まさに異色の超大作と言えるでしょう。
それから、やはり歌詞がすばらしいですね。
> 喜び勇みて羽ばたき昇れ/いと高き星辰に向かいて/いざシオンの声音よ/されど遥けき響きはいらぬ/いまや栄光の主こそ近づけれ
これは、アンチリヒターさんが書いてくださった訳詞ですが、
これを読みながら第1曲を聴いていると、思わず涙がこぼれそうになります。
そして、さらに、
中央にひときわまぶしくかがやいているのが、
最初の教会稿の名残である、「明けの明星」のコラール。
(あのBWV1と同じ!)
すっかり日も短くなり、寒さも厳しさを増してきて、
クリスマスがほんとうに待ち遠しい今日この頃ですが、
そんな今の季節に、まさにぴったりの一曲ではないでしょうか。
わたしが聴いたのは、明るい舞曲、対位法的コラール、そのどちらでも見事に対応できるヘレヴェッヘのCD。