タイトル | : BWV69と80〜3本のトランペットとティンパニ |
投稿日 | : 2006/09/09(Sat) 16:45 |
投稿者 | : 旅の者 |
> 80番に付加されたトランペットとティンパニ、葛の葉さんがサイトの解説で書かれているように、まさに「曲の構造を見えにくくし」「邪魔」だとは思うのですが、私は(最初にリヒターの演奏ででこの作品に触れたせいかと思いますが)実はこれが大好きなのです。
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> 大バッハも、作品によっては再演時に金管を強化していたりするので、ありえたかもしれず、一種の異稿のように考えればいいので、そんなに継子扱いすることもないのでは、と一時は思ったこともあるのですが、BCJの80番のCDにあった解説を読むと、ライプツィヒとヴィルヘルムがいたハレとの状況の違いから、親父もこんな編曲はしなかっただろうということがわかり、ちょっと寂しく思っていました。
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> そうしたところ、今回、ヴィルヘルムの編曲を、しかも旧全集のように80番に当てはめるのではなく、ちゃんと本来のラテン語の詞の曲という筋の通った形で録音してくれていたので、「コープマンさんありがとう!」といいたくなりました。
バッハは亡くなる直前の1748年に、
この前の日曜日のカンタータ、BWV69aを、参事会がらみのBWV69に直して上演しています。
もちろん、このときに付け加えられた音楽は、わたしたちが現在聴くことのできる、バッハの最後の音楽の一つ、と言ってよいと思います。
具体的には、第2曲、第4曲のレチタティーボと、終結コラール、の計3曲です。(他にもアリアの楽器変更等もあり)
表の掲示板では、話の流れから、「バッハのサラリーマン魂」、と軽く触れるだけにしましたが、実はこれは、決してそんなに生易しい音楽ではありません。
ヨレヨレの筆跡で記載されているというその音楽は、それだけで、この西洋音楽を代表する天才の白鳥の歌というべきものです。
弦楽伴奏付きの第4曲レチタティーボも、もはやこの世のものとも思えぬほど美しいアリオーソがすばらしいですが、
なんといっても、涙なしに聴けないのが、終結コラール!
バッハは、もとのコラールを、愛する「ルター」のものに差し替え、さらに「3本のトランペットとティンパニ」を含む、7声部の編曲を施しました。
バッハの最も力強く美しい終結コラールの一つです。
父と子が、私たちを祝福してくださいます。
聖霊なる神が、私たちを祝福してくださいます。
(ルター作、「願わくば、神我らを恵みて」 第3節より)
一方、BWV80冒頭合唱の、正確な成立年代については、わたしにはよくわかりませんが、これについても、最も後期の作であることだけはまちがいありません。
BWV69の印象があまりにも強烈なため、
BWV69と同じ最晩年の「ルター」がらみのカンタータ、BWV80の、「3本のトランペットとティンパニ」は、
飛び入り者さんと同様に、わたしにとっても、無くてはならないもの、になってしまっています。
わたしはBCJの解説というのを見ていないので、どのような主旨かはわかりませんが、もちろん、フリ−デマのようにはやらなかったかもしれませんけれど、トランペットとティンパニによる補強自体は、当然考えられることだと思います。
確かに、バッハ晩年のすさまじい対位法が、かき消されてしまう場合もありますが、
ヘレヴェッヘなどの「ネーデルランド」な演奏で聴くと、オーボエだけでは、大迫力の合唱の中にどうしても埋もれてしまいがちなコラール部分が補強され、かえって対位法が際立つようにも思えます。
(まるでトロンボーン等で声部補強されたフランドルのミサのようです!)
ヘレヴェッヘ盤については、なんでまた、トランペット版で、と思っていましたが、これは純粋に声部補強のためなんでしょう。
フリーデマンがどうして、「3本のトランペットとティンパニ」を加えた編曲を行なったのか、もちろんわたしには想像することしかできませんが、
後の研究者がむりやりBWV80にはめこんだものでなく、編曲したままを聴けるというのは、(ほんとの意味での親子共作)
飛び入り者さんがおっしゃるように、なんとすばらしいことでしょう!
端川さんにご報告いただいたBWV30aも気になります。
コープマンの最終巻、このままでは、購入も秒読みのような気がします。