タイトル | : 壮絶!ガーディナーのBWV80 |
記事No | : 444 |
投稿日 | : 2006/09/17(Sun) 11:39 |
投稿者 | : 旅の者 |
ガーディナー盤、さっそく購入して聴いてみましたが、腰をぬかすほどビックリしました。 もうBWV80についてはいいかな、とも思ったのですが、 ぜひみなさんにご報告して、このCDをご紹介してくださったa pilgrimさんに一言お礼申し上げたかったので・・・・。 (これは、No.432→437と続く投稿へのレスです。ツリーがあまりにも長いので、飛び出しました)
BWV80の冒頭合唱の構成は、コラールの各行ごとに、
1、合唱によるフーガ(コラール旋律の導入部) ↓ 2、高音器楽によるコラール旋律 ↓ 3、通奏低音によるストレッタ(密接進行)のカノン風模倣
が、くりかえされる、というものです。
オーボエか、トランペットか、で話題になった件のコラール旋律は、実は通奏低音の模倣とセットになっていて、 わたしは、この器楽のカノンこそが、前段の合唱フーガと並ぶ、最大の聴き所だと考えています。
ガーディナーは、上記2の高音コラール旋律については、通常通り、オーボエを使用しています。(つまり原典版) しかし、この通奏低音のカノン模倣を、葛の葉さんがおっしゃったバス・トロンボーンによって、ごうごうと、思いっきり吹き鳴らさせているのです! (すさまじい重低音で、大音量で聴いていたら、部屋中がビリビリと振動するほどでした。)
ちなみに、バス・トロンボーンは確かに通奏低音楽器としての使用ということになりますが、登場するのはこの部分だけです。
この通奏低音模倣は密接進行ですから、これを強調することによって、かんじんのオーボエのコラール自体も、否が応にも強調されることになり、気高く、光り輝くように浮き上がります。 もちろんカノンの構造そのものもはっきりとするわけです。
フリーデマンは、オーボエの高音コラール自体をトランペットに変更することによって、強調しようとしました。 しかしこれでは、大切な通奏低音模倣がかき消されてしまいがちでした。実際、注意して耳を傾けないと、気づかないこともあるでしょう。 (もちろん、しっかりと聴き取れる演奏もありますが)
考えてみれば、時代的に、対位法的興味はすでに失われつつあったのだから、これは当然のことかもしれません。
その点、ガーディナーは、まったく逆転の発想とも言える方法によって、すべての問題をクリアした上で、しかも、最大限の効果をあげています。 これは、実に、驚くべきことだと思います。 しかも、バス・トロンボーンは、通奏低音としての使用なので、誰も文句が言えないわけです。(笑)
(確かに、通奏低音として、低音管楽器が使用されるのはよくあることです。 しかし、コラール模倣部分に限って、これだけ威力のある楽器を使用するというのは、厳密に言えば、もちろん編曲の範疇にはいるのでしょう。 しかし、この「編曲」が、どれだけすばらしい効果をあげていることか!)
いずれにしても、ガーディナーのこのやり方は、BWV80問題?に、理想的な解答をしめすものだと思います。
全体の演奏も、例によって、現代に息づく音楽としてバッハをとらえた、生き生きとして自然なもので、 第6曲アリアの夢見るような美しさも見事。 他の収録曲も名曲ばかり。
a pilgrimさん、ほんとうに、ありがとうございました。
つけたし
冒頭合唱ですが、葛の葉さんがおしゃるように、ちょっと聴くとトランペットは登場しないようです。
でも、たまに、トランペット「みたいな」音が聞こえるような気も・・・・。
フリーデマン版における使用方法とはまったくことなりますが、もしかしたら、合唱声部を補強するストリングスの中に、一部金管を加えている?
わたしの空耳かもしれませんが。
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