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カンタータ第79番《主なる神は日なり、盾なり》

バッハの教会カンタータ(34)BWV79

カンタータ第79番《主なる神は日なり、盾なり》BWV79
Gott der Herr ist Sonn und Schild
1725,10/31 宗教改革記念日

DOVERの"The Seven Great Cantatas"より、最後の曲となりました。初演の1725年10月31日は今年と同じく水曜日でした。宗教改革記念日とは、 1517年10月31日、ルターが〈九十五ヵ条提題〉をウィッテンベルク城教会の扉に釘で 打ち付けたという伝説に基づく、プロテスタント教会最重要の記念日です。ちなみ に、このルターを讃えたのが、ニュルンベルクのハンス・ザックスで、《ウィッテン ベルクの小夜啼鳥》(1523)の詩は、ザックスの文名を高めることにもなりました。

▼曲は、いかにも祝祭らしい、2本のホルンとティンパニ、2本のオーボエと弦楽合 奏の大変華やかな合奏で始まります。このあたりは、黙って聞いていると、管弦楽組 曲にこんなのがあったかなと錯覚しそうです。"Oxford Composer's Companion"によ ると、このティンパニの連打は、ルターが〈九十五ヵ条提題〉を釘で打ち付けている ところを描写しているそうです。そう言えば、「ニュルンベルクのマイスタージン ガー」でも、ザックスが釘を打つ場面がありました(全然関係ない)。続いて、ホルンとティンパニは 休んでの合奏フーガ。このフーガ主題は、さっきの「釘打ち」(?)そのものですね。や がて合唱が加わって、さらに華やかに展開していきます。

2曲目のアリア(A)はオーボエ(またはフルート)のオブリガートをしたがえて、 なかなか愛らしい。

3曲目コラールでは、また1曲目のホルンとティンパニの主題が帰ってきて、力強く 「神に感謝せよ」と歌います。ここで、何となく全曲の終わりという感じで、残りの 3曲は後で付け加えられたのだとか、ここで説教が入ったのだとか言われています が、実際のところはよく分かりません。

4曲目では、バスが暗めのレシタティーヴォを歌い、5曲目ではソプラノとバスの2 重唱。ここでは伴奏の弦のオクターブジャンプが印象的。短調のメロディーが親しみ やすく、実際に歌うと楽しそうです。

最後のコラールは、三たびホルンとティンパニが帰ってきますが、今度はコラールの旋 律に沿って吹いているだけ。前半の華やかな印象に比べると、後半はちょっと地味な 感じでした。

▼演奏は、次のようなのがありました。

ギュンター・ラミン 1950 EDEL
レオンハルト 1978 TELDEC
リリング 1981 Hänssler
ロッチュ 1982 EDEL
Leusink 2000 Brilliant

最初の4つを聞きましたが、どれも立派な演奏です。ラミンはアルトも少年で、 ちょっと聞き苦しいかも知れませんが、それなりの迫力と価値があります。レオンハ ルトのナチュラルホルンは、音程の微妙な違いも含めて、なかなか迫力がありまし た。こちらはソプラノのみ少年で、アルトはカウンターテナーです。どちらも、最高 にうまいです。リリングの第2曲アリアのオブリガートは、オーボエでなく再演(1730年?)時の フルートを採用していました。バランスのとれた良い演奏でした。ロッチュの演奏 は、厚めのアンサンブルと合唱が魅力で、特にホルンはあのギュットラーが吹いてい て、これは実にうまいです。

▼宗教改革記念日のカンタータと言えば、BWV 80が最も有名で、演奏も非常に多いで す。(手元にあるだけで13種類。)ちょっと大変ですが、次回はこれを聞くことに しましょう。

(2001年4月29日)
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2002-06-29更新
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