カンタータ第23番 《汝まことの神にしてダビデの子よ》


バッハの教会カンタータ(24) 《汝まことの神にしてダビデの子よ》BWV23
Du wahrer Gott und Davids Sohn
1723, 2/ 7 復活祭前第7日曜日

前回書いたように、カンタータ第23番《汝まことの神にしてダビデの子よ》はBWV22 と同時に作曲され、同じ日に初演されたとされています。ただし、最後のコラールは バッハの着任後に付け加えられたものです。

▼22番ではイエスがエルサレムに上る(すなわち十字架の受難の)決意を述べるシー ンがテーマになっていましたが、23番では、エルサレムに上るイエスに対し、道すが ら二人の盲人が「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫び続 け、イエスに癒されるというシーンをテーマにしています。

▼そういえば、最初のアリアは2本のオーボエによるオブリガートで始まる、ソプラ ノとアルトの二重唱です。つまり、これが二人の盲人を表しているわけだな。まあ、 そういう具体的なイメージは抜きにしても、「主よ、憐れみたまえ」("Erbarm dich")と言う言葉は、バッハのカンタータと言うか、音楽全体を貫く通奏低音のよう なものです。ただ二人の盲人を表現するというのではなく、それを自分にひきつけて 考える心があるから、こういう慰めに満ちた音楽が書けるのだなあ。

▼第2曲のレシタティーヴォは、さらに救いを求める心に立ち入っていくような、切 実なもの。一つ一つの言葉に応じて、調性や曲想が変化していくのがよく分かりま す。

▼第3曲コーラスと、終曲のコラールは、この作品の最大のポイントでしょう。第3 曲では、輝かしい合唱の合間に、バスとテノールのデュエットが割って入り、さらに 劇的な効果を上げています。これは、バッハの合唱曲の中でも大変優れたものといえ るのではないでしょうか。そして、次のコラールがそれと同様にすばらしく重量感の あるものです。ここでは、2本のオーボエと弦楽器が荘重な、ええと、こういうのを 「リトルネッロ主題」と言うのですか、を奏し、「世の罪を除く神の子羊よ、われら を憐れみたまえ」というコラールが様々に形を変えて歌われるわけです。これも、 バッハの合唱コラールの中で最も優れたものの一つと言えるのでしょう。

で、この最後の二つに注目すると、ヨハネ受難曲の終わり方にそっくり。それどころ か、このコラールは、ヨハネ受難曲第2稿の終曲コラールとしてもそのまま用いられ ているのです。

▼と言うわけで、22番、23番ともに、規模は小さいが、中身の充実した作品でした。 ライプチヒ時代に、以後どれほど多くの優れた作品が生み出されていくのか、宝の山 に踏み込んでいく気分です。

▼演奏は、コープマンも非常にうまい演奏ですが、入手のしやすさ、万全の説得力で 鈴木盤。22番、23番、75番、いずれもすばらしい作品で、カップリングも最高です。

(2000年11月20日執筆)


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